〔本の概要〕
著者は社会学者の宮台真司氏の師匠です。
数学とはなにかという話から始まり、日本と諸外国との論理構造の違いにまで話は及んでいきます。
〔感想〕
日本人は宗教を信じていない人が多いのに、どうして落ちている財布を届ける人が多いのか。というのは海外の人(外国人という単語は海外の人からすると聞こえが悪いそうです)から良く聞きますね。私は盗んだのがもしばれたら村八分になるので、リスクが大きいためだと思っていました。同調圧力と相互監視でなりたつ社会がいいのかというと、どうなのかなと思いますが。
日本には規範というものがその場の空気で決まってしまうので、しっかりした規範がない。だいたい規範はあるかないかであってグラデーションの規範というのはそもそもおかしいですね。キリスト教国や中国は規範がきっちりしているので、規範があいまいな国のことが不気味に見えるようです。規範があることと、それを守る人が多い、暮らしやすいかどうかはまた別の話ですが。
日本語でいう”無規範”には二つの意味があって、一つは”規範はあるがそれを守らない”という意味で、もう一つは”そもそも規範がない”という意味。私が言うのは後者の方で、反論者が言っているのは前者のほうなのである。つまり事実は、アラブやアメリカでは確固たる規範はあるが、それを守らない人間がひじょうに多い。それに対して日本は、犯罪があまり発生しないほど落ち着いた社会ではあるが、最初から規範がないということにすぎない。しかし、この規範があるかないかが、その社会に与える影響はひじょうに大きい。つまり日本社会では、物事の善し悪しがその場その場の「空気」で変わるわけである。
数学を使わない数学の講義 小室 直樹(著) P85-86
そういうわけで空気の圧力が日本ではとても強く、抗えない空気によって戦争に突き進んだりしてしまうんだなと腑に落ちました。
2022年70冊目
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